『情報を展開します』は正しい日本語?
2016年5月11日
当社は今年10周年を迎えましたが、設立したばかりの頃にリクルート時代の同僚から新人研修のお仕事をいただいたのがきっかけで、毎年4月はいくつかの企業・団体様の新人研修、ビジネスマナー研修を担当させていただいています。
一年に一回となるとやはり緊張するもので、受けている新人たちも当然緊張していると思いますが、それと恐らく同じぐらいの緊張感で臨んでいるため、終わるともうクタクタになります。でも、このおかげで、自分自身の行いやマナーを見直すとてもよい機会にもなっています。
ビジネスマナーというと、名刺交換や電話応対、お辞儀の仕方やお茶の出し方などを思い浮かべると思いますが、私は昔、日本語教師だったこともあり、言葉づかいに力を入れて指導しています。言葉というのは、少しずつ変化しているので、一時的な流行で終わる言葉もありますが、それが定着して普通の日本語になっていく場合もあります。「ら抜き言葉」と言われる「食べれる」「見れる」といった使い方も、だいぶ違和感が薄れてきていますし、若者言葉と問題視される「よろしかったでしょうか」も、かなり広範囲な人たちに使われていますので、そのうちに定着してしまうかもしれません。ということで、この時期になると、いつもより言葉づかいに敏感になるのですが、特に最近気になっているのが、「展開する」の使い方です。
最近、「資料をありがとうございました。さっそく社内で展開します。」という使い方をよく見聞きするのです。どうも「情報共有」の意味で使われているようなのですが、日本語の辞書にそのような意味はなく、元日本語教師としてはどうしても気持ち悪く、見るたびに心にひっかかるのです。
が、今日、たまたま、この『「砥石」と「研削・研磨」の総合情報サイト。』というところにたどり着いて、やっと「そうなのか!」と思った次第です。このサイトから一部引用させていただきますと
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自動車業界や自動車部品業界などで耳にする「展開する」というのは、関係者へ情報を伝達・連絡することを意味する用語で、もともとはトヨタ殿で多用されていたものが、納入メーカー等にも波及したものと思われます。「情報展開」の意味で、他業界でも使われたりもしますが、使用頻度が格段に違います。自動車部品業界では、部署や会社によってはこの用語を聞かない日はないと言っていいかもしれません。
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とのこと。そうか、業界特有の使い方だったのか!と、やっと少しスッキリしました。
今ではもう様々な業界で使われていて、業界特有の使用法ではなくなりつつありますが、これも普通の日本語として定着するか・・・。ぜひ、昔の日本語教師仲間と、このテーマで一度議論してみたいと思います。