沈黙はもう金ではない。
2017年2月3日
US大統領に選出されたトランプ氏が、議会を招集する前に「大統領令」を連発して、US国内だけでなく日本のニュースまでも賑わわせています。
政治経験なく突如大国のトップに躍り出た氏としては、これまでの議会の慣習など、悪弊にしか思えないのでしょう。
しかしながら、「大統領令」は国民の代表が集まる議会での討論もなしに発することが出来る特殊な政令であり、いわば“禁じ手”。それを連日得意顔で発している姿は、あたかも「特権を手にしたガキ大将」に見えてしまいます。
また、トランプ氏を支持した中西部各州や五大湖周辺のラストベルト(錆びた工業地帯)の住民たちは「雇用が戻るだろう」「政治が庶民のものになる」と喜んでいるかもしれませんが、どうもトランプ氏の周囲にいる人々を見ると、おしなべて多国籍巨大企業の幹部やタカ派の元軍人ばかりが目立ちます。
特にこれまで「富裕層をより豊かに」して来た張本人の金融業界出身者も多く、氏に投票した人々を豊かにするための政治が本当に出来るのかどうか、疑わしさも感じます(例えば、就任してすぐに「オバマケア」と呼ばれるユニバーサル医療保険制度を廃止しましたが、トランプ氏や周辺はそもそも高級な医療保険に入っていた人たちで、オバマケアの享受者ではありません)。
そしてトランプ氏は、とうとう特定の国からUSに入国することも禁止してしまいました。
氏はメキシコへの工場移転阻止などで就任前から企業活動に対しても注文を付けてきましたが、この「人の移動」を国籍によって差別することに、有能な移民を取り込むことで成長してきたIT産業を中心とした数々の企業も様々な方法で反対意見を述べ始めたことに、感心しました。
そんな中、net検索大手のGoogleは、USでの自社サイトの「記念日ロゴ」に、日系社会運動家の故フレッド・コレマツ氏のイラストを掲げました。
コレマツ氏は第二次大戦中に日系人に対して行われた強制収容政策に戦中から戦後まで一貫して反対した人権活動家で、その息の長い活動が実り、US議会から日系人の名誉回復と謝罪、そして補償を勝ち取った中心人物のひとり。そしてUS民間人として最高位に当たる「大統領自由勲章」も授与されている偉人とのことです。
この件を多くのメディアが報じています(20170203現在)。
http://www.cnn.co.jp/tech/35095826-2.html
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12776968.html?rm=150
http://mainichi.jp/articles/20170131/dde/041/030/035000c
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syunzyu/article/305203
企業は往々にして、政策決定にコミットできるとの思惑から時の政府におもねる傾向にありますが、政府の動きが社会正義に反すると考えれば、言動や行動で姿勢を示すことは可能だと思います。様々な問題が渦巻き、目まぐるしく変化する現代においては、必ずしも「沈黙は金」ではないのではないしょうか。
一企業たるGoogleは、トランプ大統領による「特定国籍に限った入国禁止令」署名の日に、フレッド・コレマツ氏を讃えることで、企業メッセージを発したのだと思います。
コレマツ氏は生前こう言われたそうです。
[If you have the feeling that something is wrong don’t be afraid to speak up.]
[KODAMA]